そしてキアロスタミはつづく

20211016日(土)より
ユーロスペース他全国順次公開

イントロダクション

『友だちのうちはどこ?』にはじまるジグザグ道三部作や、カンヌ国際映画祭でパルムドールを受賞した『桜桃の味』などで知られるイランを代表する巨匠アッバス・キアロスタミ監督(Abbas Kiarostami、1940年6月22日-2016年7月4日)。詩や写真でも才能を発揮していた彼の映画は人生の真実にあふれ、観た者の心に忘れえぬ記憶として今なお残りつづけている。

そのキアロスタミ監督の珠玉の傑作7作品が生誕81年を記念してデジタル・リマスター版でスクリーンに甦る! 本来は生誕80年である2020年に、フランス・パリのポンピドゥーセンターでの回顧展「Abbas Kiarostami Ou est l’ami Kiarostami?」に合わせて日本でも劇場公開を企画していたが、コロナによって回顧展が延期。その後、没後5周年となる2021年5月に同展が開催されたのを受け、世界的にキアロスタミ監督の再評価が高まるなか、日本でも満を持してデジタル・リマスター版が劇場初公開される。

今回の7作品はパリのmk2、ニューヨークのクライテリオンコレクション、ボローニャのラボ、リマジネ・リトロヴァータが2年をかけて修復した4Kまたは2Kリマスター版となる。上映は全作品2Kで行われる。

上映作品

キアロスタミ監督略歴
&フィルモグラフィー

監督略歴

Abbas Kiarostami

アッバス・キアロスタミ

アッバス・キアロスタミ

1940年6月22日、イランのテヘランで生まれる。幼い頃から絵を描くことに強い興味を示し、18歳の時にグラフィック・アートのコンテストに応募、優勝を果たす。テヘランで美術学校に学びながら、グラフィック・デザイン、ポスターのイラスト、CFの監督といった仕事をして生計を立てていたが、1969年、児童青少年知育協会の映画部門を創設。そこで最初の短篇映画を監督する。
その処女作品『パンと裏通り』(70年)で、キアロスタミは映像の重要性、そしてリアリズムとフィクションの関係性を探っている。その後、長きにわたる一連の短篇・中篇で、自らが好んだ“幼少期の世界”というテーマを表現し、その過程で、物語映画とドキュメンタリーの間の微妙なバランスを保つ自分のスタイルを確立するようになる。『ホームワーク』(89年)はその最後の“幼年期映画”であり、イラン社会の深刻な問題を静かに告発しながらも、詩的で心温まる作品となっている。
つづく『クローズ・アップ』(90年)で、キアロスタミは新たなページを開く。1週間にも満たない短い期間で、あるニュースの実話を元に、主だった登場人物をその本人である実在の人物に演じてもらい、現実をフィクションの領域に導入した作品に仕上げてみせたのである。それに先立つ『友だちのうちはどこ?』(87年)で始まった“ジグザグ道三部作”が、次の二作品『そして人生はつづく』(92年)と『オリーブの林をぬけて』(94年)で完結。後者では、イラン北部で実際に起きた地震の破壊的な影響が、映画という虚構を露わにしている。

『桜桃の味』(97年)は、キアロスタミが自分自身へと目を向けた作品であり、カンヌ国際映画祭パルムドールを受賞、映画賞受賞監督の仲間入りを果たした作品でもある。映画は自殺願望にとりつかれた50歳男性の物語を語りながら、個人の自由を讃える頌歌となっており、批評家からは高く評価されたものの、イラン国内の宗教的権威からは非難を浴びた。思索的でゆっくりとしたテンポ、複雑さを排した筋立て、ペルシャの詩と西洋の哲学への目配せといった、監督のトレードマークが並ぶ、キアロスタミならではのオリジナルな作品である。また、大雑把に書かれた脚本や素人俳優の起用、自身による編集などは、彼の即興への関心に根差したものだといえる。次作『風が吹くまま』(99年)は、都市生活者の一行が田舎の村に何かを探しに行くというストーリーで、これも監督のユニークなスタイルを示す一例である。

2001年以降、キアロスタミは小型のカメラを好むようになり、その結果、デジタル作品のみを手掛けることになる。この自分にとっての≪カメラ万年筆≫によって、より大きな自由を得た彼は、それを使って様々な長さの自然主義的作品を監督した。たとえば、『ABCアフリカ』(01年)、『10話』(02年)、『5 five ~小津安二郎に捧げる~』(03年)、「10 on Ten」(04年)、『シーリーン』(08年)などがそうである。

2009年、再びフィクションへと戻ったキアロスタミは、初めて母国イランを離れイタリアで『トスカーナの贋作』を制作する。主演に国際的女優ジュリエット・ビノシュを起用した本作はカンヌ国際映画祭主演女優賞を受賞した。イタリアに続き、『トスカーナの贋作』のような制作体制で臨んだ『ライク・サムワン・イン・ラブ』は、キアロスタミを日本という新たなる発見の世界へと導いた。2016年には今度は中国での撮影を予定していたが、同年7月4日、入院先のパリの病院で急逝。76歳だった。2017年、映画と写真の統合を試みた実験的な作品『24フレーム』が彼の死後に完成、公開された。

フィルモグラフィー

1970年
『パンと裏通り』 Nan va koutcheh
1973年
『経験』 Zang-e tafrih
1974年
『トラベラー』 Mossafer
1975年
『できるよ、ボクも』 Man ham mitouam
1975年
『一つの問題への二つの解決法』 Dow rahe hal baraye yek massaleh
1976年
『結婚式のスーツ』 Lebassi baraye arossi
1976年
『色』 Rangha
1977年
『レポート』 Gozaresh
1978年
『解決Ⅰ』 Rah hal-e yek
1979年
『最初のケース、次のケース』 Ghazieb shekel aval, Ghazieb shekel dou wom
1980年
『歯科衛生学』 Behdasht dandan
1981年
『順番を守る、守らない』 Regularly or lrregularly
1982年
『コーラス』 Hamsarayan
1984年
『1年生』 Avaliha
1987年
『友だちのうちはどこ?』 Khane-ye doust kodjast?
1989年
『ホームワーク』 Mashgh-e shab
1990年
『クローズ・アップ』 Close-up
1992年
『そして人生はつづく』 Zendegi edame darad
1994年
『オリーブの林をぬけて』 Zir-e derakhtan-e zeytoon
1995年
「Reperages」 Reperages (「A Propos de Nice, La Suit...」の一篇)
1995年
「An Egg」 An Egg (「Lumiere and Company」の一篇)
1996年
『桜桃の味』 Ta’m e Guilass -カンヌ国際映画祭・パルムドール受賞
1999年
『風が吹くまま』 Bad Ma Ra Khahad Bord -ヴェネチア国際映画祭・審査員賞受賞
2001年
『ABCアフリカ』 ABC Africa
2002年
『10話』 Ten
2004年
「10 on Ten 」10 on Ten
2004年
『5 five ~小津安二郎に捧げる~』 DEDICATED TO YASUJIRO OZU FIVE 5 LONG TAKES
2006年
『明日へのチケット』 TICKETS
2007年
「Where is My Romeo?」 Where is My Romeo? (『それぞれのシネマ』の一篇)
2008年
『シーリーン』 Shirin
2010年
『トスカーナの贋作』 Certified Copy -カンヌ国際映画祭主演女優賞
2012年
『ライク・サムワン・イン・ラブ』 Like Someone in Love

コメント

関連情報

洋画専門チャンネル ザ・シネマMEMBERS

エッセンシャル:アッバス・キアロスタミ

本企画と連動して、ミニシアター系のサブスク:ザ・シネマメンバーズでは、キアロスタミ監督のエッセンシャルな5作品を10月から順次配信開始!
ラインナップはこちら

「映画の旅びと イランから日本へ」

ショーレ・ゴルパリアン/みすず書房

「映画の旅びと イランから日本へ」

憧れの日本に来てから40年、激動の時代のなかでイランと日本を往復。キアロスタミをはじめとする個性派ぞろいの監督たちとともに映画をつくり、訳し、拡め、二つの文化に橋をかけたイラン女性の涙と笑いの半生記。
詳しくはこちら

ISBN:978-4-622-09033-5
発売日:2021年9月1日予定/定価3,960円(税込)

劇場情報

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都道府県 劇場名 公開日 電話番号
北海道・東北
北海道 シアターキノ 2022年1月22日~27日 011-231-9355
宮城 チネ・ラヴィータ 終了 022-728-7866
関東
東京 ユーロスペース 終了 03-3461-0211
東京 下高井戸シネマ 2022年2月19日~3月4日 03-3328-1008
神奈川 シネマ・ジャック&ベティ 終了 045-243-9800
神奈川 川崎市アートセンター 12月25日~28日 044-955-0107
群馬 シネマテークたかさき 2022年1月29日~2月11日 027-325-1744
長野 上田映劇 2022年1月29日~2月18日 0268-22-0269
静岡 シネマ・イーラ 2022年2月4日~11日 053-489-5539
中部・北陸
愛知 名古屋シネマテーク 2022年正月 052-733-3959
関西
大阪 シネ・ヌーヴォ 2022年2月 06-6582-1416
京都 京都みなみ会館 2022年2月 075-661-3993
京都 京都出町座 2022年2月 075-203-9862
兵庫 元町映画館 2022年2月 078-366-2636
中国
広島 シネマ尾道 近日公開 0848-24-8222
九州・沖縄
福岡 KBCシネマ 2022年1月2日~ 092-751-4268
熊本 Denkikan 2022年1月14日~1月20日 097-536-4512
大分 シネマ5 終了 097-536-4512
沖縄 桜坂劇場 2022年1月22日~1月29日 098-860-9555